前日の土曜日の夜にスマホを失くしてしまった。
気持ち良く酔っぱらって帰って着替えたところでスマホが見当たらない事に気がついた。その上メガネもない。
お店に忘れてきたに違いない。そう思って電話するも帰ってきた言葉は「いやあ、無いねえ」。
慌ててバッグやズボンのポケット、家の中を探したものの出て来ない。
電車で眠りこけたわけではないし駅からは真っ直ぐ帰ってきたはず。
釈然としないままソフトバンクに電話して回線停止の手続きをとった。
翌日の朝起きても気持ちはずっともやもやしたまま。
こんな精神状態でライブに行って楽しめるだろうか?いっそ行くのをやめようかとも思ったけど、それでどうなるわけでもないと気持ちを奮い立たせた。
警察と駅で問い合わせをすれど該当する届け出はないとの事。だんだんと不安が大きくなってくる。
電車の中ではほとんどの人がスマホを眺めている。7人掛けのシートだと5人から6人がスマホで残りの人は眠っているといった様相。
この車両の中でスマホを持っていないのはおそらく自分だけだろう。
ちょっと時間を確認しようと思うと「あっ、スマホないんだった」と気がつく。
気になる事があってもすぐに調べられないし写真も撮れない。
いかに自分がスマホに頼って生活していたかを思い知らされる。
さて、町あかりのライブを見るのは非常事態宣言が発出される直前だった2020年3月以来*1。
コロナが収束しつつあっても、有観客でのライブは行っていなかった町さん。
もうライブはやらないのだろうか?などと思ったりもした。
ところが、今年に入って新作EPのリリースとそれに合わせた全国レコ発ツアー、更に首都圏でのリリイベと、急に動きが慌ただしくなってきた。
やっぱりこれは絶対に外せない。
結論から言うと、めちゃくちゃ良かったです。行って良かった。
町さん自身がこのイベントを楽しみにしてきた事、そして観客の前で歌える喜び、そんな気持ちがこちらにも伝わってきたのだと思う。
町あかりってこんなに楽しそうに歌う人だったっけ?なんて事も思った。
歌う姿を見ていたら、それだけで幸せな気持ちになってきた。
この日はまず、長井英治、鈴木啓之、チェリー各氏を迎えての、町あかりがコロナ前から行っていたトークイベント「歌謡曲研究所」のディスコ編からスタート。
ゲストの3人がそれぞれ2曲ずつ、町あかりに歌ってほしいディスコ歌謡を持ち寄り、それを町さんが歌うというこの日ならではのレアな趣向。
なんだけど誰もが知っているようなヒット曲が選ばれるはずもなく、同時代を生きてきたはずの自分が知っている曲は辛うじて長井さんが選んだ岩崎宏美の「ドリーム」のみ。
他の5曲は石野真子、平山三紀(いずれもあまり有名ではない曲)、しのづかまゆみ*2、そして二科恵子「恋のキラキラダンス」にフィーバー「ユー・アー・セクシー」と、どんどんディープになっていく。
そんな曲を町あかりは「難しい」と言いながら歌いこなす。改めて歌の上手さに感服。声もリズム感も良いんですね。
「この人は〇〇というレジャー施設のイメージキャラクターだった」などというマニアックな話題も飛び出す。
町あかりのライブは「モグラたたきのような人」で始まる。ピコピコハンマーも久しぶり。「ラーメンは軽犯罪」、「医者に止められてます」が続く。楽しい!!
続いて、ディスコをテーマとした新作EPより4曲を曲順通りに歌う。
町あかり流歌謡ディスコが繰り広げられる。
どれも良いんだけど僕が特に好きなのは3曲目の「黒帯フィーバー」。重いビートに軽やかなフルートの音色、ベースも印象的。
「楽園流しの刑」について「自分で作った曲なのにこの曲に励まされる」と言っていたように、町あかりの作る曲には「上手く行かないことの方が多いけど人生なんてそんなもの、みんな引っくるめて人生を楽しもう、肩肘張らずありのままに生きていこう」というような曲が多い事に今更ながら気がついた。
素敵なメッセージソングと言うべきか。
しかし楽園流しの刑って何だろうね?そんな楽しそうな刑だったら受けてもいい、いやむしろ受けてみたい。
いやいや、やりがいや手応えや張り合いを奪われた地獄の楽園なんて、やっぱり面白くも何ともないのかもしれない。
後半の「MINITSUMA」、「長所はスーパーネガティブ」、「激辛デスソースの人生」といった曲が更に胸に迫ってくる。
激辛デスソースの人生を あなたも私も送ろう
辛くて辛くて涙が出るような 良い人生を送ろう
こんなのしみじみと歌われたら泣いてしまうじゃないか。
これ書いていて「からい」と「つらい」が同じ辛いという文字だと気がついた。
「これが最後の曲です。今日のセットリストどうでしたか?」という問いかけに「最高!」と答える客席。
「最高のセットリスト」(めちゃくちゃ良い曲、大好き)に続いて、アンコールは「コテンパン」。みんなで「パパン パパン」。
本日の出演者を全員ステージに呼んでの撮影タイム(スマホが無い自分は指をくわえて眺めるのみ)*3の後、そそくさと物販ブースに移動する。
「昨日スマホを失くしてめちゃくちゃ落ち込んでいたんですけど楽しくて泣きそうになりました。元気になりました。本当に来て良かったです。」と早口気味に喋る自分に、ニコニコしながら「えー、それは大変、スマホは辛いですよね、見つかるといいですね」と言ったくれた町あかりさん。後光が差していましたよ。
更に、町あかりデザインによる歌謡曲研究所のTシャツと缶バッジのセットが1,000円の破格値で売っていたのででこちらも購入*4。
これが厄落としになると良いのだけど。
このライブから3日後の朝、布団から起き上がってふと横を向いた視線の先に・・・
スマホとメガネが置いてありました!!!
なんだ、やっぱり家にあったのか。
どうしてここに置いたのだろう?
どうして今まで見つからなかったのだろう?
何はともあれ、めでたしめでたし。*5