チーボーのブログ

主にライブに行った記録(まちだガールズ・クワイア、NaNoMoRaL、THE ORGANICS、クレイビットなど)

LPを片っ端から聞いてみた(番外編)遠藤賢司/東京ワッショイ

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ちょうど5年前の10月25日、エンケンさんはあの世へ旅立ってしまった。
2013年1月14日に書いた文章を、そのままここに再掲したい。
 
●このアルバムより 「不滅の男」

youtu.be


  今まで何度 倒れただろうか
  でも俺はこうして 立ちあがる
  そうさ やる時は やるだけだ
  俺は負けないぜ そう男

僕は、何度同じような失敗を繰り返してきたことか。
自分の愚かさ、だらしなさ、ふがいなさのせいで窮地に陥ったこと数え切れず。
目の前が真っ暗になり、落ち込み、自分を責めても後の祭り。
もう消えていなくなってしまいたい。
そんな風に思った事だって一度や二度ではない。

そんな時、いつもエンケンが鞭をいれてくれる。
「負けんじゃねえ、ちゃんとやれ」と。
自分が今こうして生きていられるのはこのアルバムのおかげ。
そう言ってしまっても決して過言ではない。
エンケンは厳しい。
そして、とてつもなく優しい。

こんなのは自分の一方的な世迷言、甘えに過ぎないのだけれども。

  まるであいつは 勝ち誇ったように
  ついに この俺に こう言った
  「おい、お前も頑張れよ」って 冗談じゃないぜ馬鹿野郎
  そうすりゃお前みたいになれるのかい お前はお前 俺は俺

横尾忠則によるキッチュなジャケ。
噴火する富士山、新幹線、桜、雷門の提灯、後楽園球場、パンダのぬいぐるみを抱えたエンケン、真ん中にはギターを抱えたエンケン
そしてピラミッドカレーが宙を舞う。
裏返せばUFO、二重橋国技館、東京タワーにはモスラ
このアルバム「東京ワッショイ」の世界観を100%表現した見事なジャケットだと思う。

時は1979年。
一般的にはフォークの人と思われていたエンケンが、セックス・ピストルズクラフトワークに触発されて作った馬鹿馬鹿しいまでのパワー満載の1枚。エンケンはそれ以前から今に至るまでまったく変わっていない。でも「東京ワッショイ」は、エンケンの才気と時代がシンクロして作られた、やっぱり奇跡のような最高のアルバムなんだと思う。

曲は「不滅の男」の他にも粒ぞろい。
東京への愛情に溢れたロックンロール「東京ワッショイ」「続東京ワッショイ」。ロボットの失恋を、そのまんまクラフトワークサウンドに乗せて描いた詩情あふれる「哀愁の東京タワー」(考えてみればこれが自分のテクノポップとの最初の出会いかもしれない)。故ポール・コソフに捧げられた美しいバラード*1「天国への音楽」(いくらいくら微笑んでも 返ってくるのは裏切りばっかりだ おおギターよ 教えておくれ どうしてだい おおギターよ)。
インストも含めて、全ての曲がエンケンそのもの。大大大大大好きだ。

  年をとったとか そういう事じゃないぜ
  俺が何を 欲しいか それだけだ
  そう俺は本当に 馬鹿野郎だ
  だから わかるかい 天才なんだ
  
  「頑張れよ」なんて 言うんじゃないよ
  俺はいつでも最高なのさ ああ
  俺は不滅の男 俺は不滅の男

この音楽の上っ面や体裁を見て、軽薄な安っぽい音楽だとしか感じない人もいるだろう。それは人それぞれの感じ方、否定はしない。
でも、そういう人とは本当のお友だちにはなれないような気がする…←だから友だち少ないんだろうか(笑)

このアルバムの輝きは今も変わらない。
このジャケットのように、僕の心の中では永遠に金ぴかキラキラ輝き続けているだろう。
無人島でも棺桶でもどこでも、1枚だけ持って行くレコードを選べと言われたら、迷うことなくこれを選ぶ。胸を張ってこれを選べる自分でいたい。
だから、アホでどうしようもない自分だけれども、それまでちゃんと生きていく。
自分を「最高」と思えるように。

「不滅の男」、渾身のライブバージョンも貼り付けておく。

youtu.be

*1:というよりもブルース